現在では造血器腫瘍の分子メカニズムは、染色体転座に関する研究、がん遺伝子やがん抑制遺伝子に関する研究、シグナル伝達に関する研究などが融合し、着実に解明されつつある。既に造血細胞の分化・増殖にかかわる数多くのシグナル伝達分子が明らかにされているが、それらをコードする遺伝子に異変を生じると、増殖因子の受容体、ナロシンキナーゼ、セリン、スレオニンキナーゼ、GTP結合蛋白質などが含まれる。また、核内に存在して遺伝子の発現を調節する転写因子や細胞周期制御因子、さらにはアポトーシス制御分子も質的変化によって造血器腫瘍にかかわることが示されている。(「巻頭言」より)