知/権力の体制と関係の政治学において,ないがしろにされてきた人々の経験,話す機会がなかった事実,言及できなかった過去を言葉にする空間をクライアントとともに創り出す。文化人類学,社会学の知見を取り込み,社会的差異と歴史性の省察を旨とするその独創的セラピーは,オーストラリアから世界中に広がり,セラピーの慣習的概念を変容させ,精神病の理解を作り直し,悲嘆への新しい対処法を提供し,精神医学知識のヘゲモニーに挑戦し続けている。創始者マイケル・ホワイトが遺した数多のテクスト/インタビューより厳選,「ナラティヴ・セラピー」の思想=実践の核となる珠玉の8篇。