本書は,精神分析の発展に貢献した著名な分析家を取り上げ,その生涯に注目しながら,精神分析の理論と臨床を学ぶものである。かつてフロイトがそうであったように,分析家の理論は,そのパーソナリティあるいはその生涯と密接に関連している。精神分析理論は,その臨床理念に基づき,普遍性を求めて築き上げられてきた。人間の心を理解するために創り上げられたこれらの心理学的理論は,分析家自身が人間として苦悩し懸命に生きた足跡であり,その後の幾多の検証を経て,その結果として普遍性と科学性を備えてきたといえる。精神分析を生み出しそして発展させた精神分析家たちの生涯と思想を,日本のそれぞれの学派の代表的な研究者であり臨床家である講師自身の言葉でそれに向けての思いを語ることによって,精神分析家それぞれの生涯と理論の結びつきと,それを学ぶことのもつ深い意味合いとが重なりあって読者のもとに届けられるであろう。