本書は,トラウマとアディクション両方の問題を抱えた当事者が,治療者やカウンセラーの助けを得ることができない場合でも,自分自身で問題に取り組み回復の道を歩めるようにと「セルフヘルプ(自助)を第一の目的として書かれた治療ガイドであり,回復の援助となる多くの仕掛けや工夫が散りばめられている。各所に置かれた質問やエクセサイズには,たとえ読者がひとりぼっちの部屋でこの本を開いていたとしても,信頼できる治療者やカウンセラーが傍らに腰かけてそっと支えてくれているような感覚を味わうことができるようにという願いが込められている。そして,全章にある当事者の示唆に富んだ短い体験談は,ときに険しく苦しい読者の回復の道を照らし続けてくれる希望の光である。このような意味で,本書自体に支援共同体としての役割が期待できるであろう。トラウマとアディクションに苦しむ人びとと家族,援助者のための実践的なワークブックである。