精神分析はこころをより深く理解していくことを目指した臨床活動です。本書は、著者ブリトンのそうした長年の精神分析臨床に基づいた著作です。現役の精神分析家が、日々の臨床と豊かな精神分析の知識、文学や哲学についての深い造詣を創造的に練り上げた傑作であることは論を待ちません。本書の特性は第一に、精神分析や心理臨床、精神保健の実践に役立つ新しいこころについての理論や治療介入の技法を提供してくれるところにあります。私たちが私たち自身の考えや想像、空想などとこころの中でどのように関わっているのかとの主題から、こころの臨床に携わる人たちの人間理解を深めたり、理解のための新しい視点をもたらし、そのかかわりに有用な方法を豊かに示してくれます。しかしそれのみならずもうひとつに、その主題から展開している文学や哲学についての奥深く新鮮な見解があります。本書には幅広く、精神分析、精神保健や心理の臨床家、思索家、そして文学に関心を抱く人たちも満足させる懐の深さがあると私は思います。(「監訳者の紹介」より)